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深大寺 〈蔵〉プロジェクト

蘇り、息づく〈蔵〉

取り壊しの危機と歴史的価値の判明

1996年、先代の持ち主を失った「竹屋長四郎の蔵」は取り壊しの憂き目に遭っていました。

というのも、〈蔵〉が立っていた場所は浅草の中でも大通りに面した超一等地。〈蔵〉を取り囲むかのように高く現代的なビルが立ち並び、時代にそぐわない外観の〈蔵〉はまるでタイムスリップしてきたかのような存在でした。

しかし、台東区の文化財保護審議会委員を務めていた東海大学建築学科助教授(当時)の建築史家・稲葉和也さんが〈蔵〉の歴史的価値を見出します。

天井を覆っていた板の裏に隠れていた太く頑丈な梁(はり)に書かれていた「慶応四戊辰年 八月吉日 三代目竹屋長四郎 妻 い勢 伜 小三郎 建之」の文字。〈蔵〉が江戸時代に竣工されたものであることが判明します。

写真中央を横切る太く頑丈な梁(解体工事の様子)

そこで、この〈蔵〉を保護するための一大プロジェクトが発足したのです。

200人を超えるボランティアたち

〈蔵〉は、数十年間誰も立ち入っておらず、手も付けられないようなボロボロの状態でした。

そんな中、〈蔵〉の改修を申し出た人物がいました。漆造形作家の鍋島次雄さんです。鍋島さんは左官職人の加藤信吾さんほか大工や鍛冶職人、アーティストなど200人もののボランティアの手を借りて、約1年かけて〈蔵〉を改修しました。

リノベーション後の〈蔵〉2階の様子

通気をよくするために新しく設けられた吹き抜けや、漆喰で仕上げられた壁、艶を帯びた黒漆の床など、リノベーションとも呼ぶべき大規模な改修によって〈蔵〉は百余年もの時を超え、息を吹き返しました。

1997年4月28日、ついに「ギャラリー・エフの蔵」はアートスペースとしてオープン。

2~30cmの厚さの観音開きの扉

鍋島さんが〈蔵〉の内部に初めて足を踏み入れた瞬間に湧いてきたという黒く光る『月夜の森』のイメージが、見事な漆塗りによって見事に完成しました。

その重厚さと静けさに人々は圧倒されました。

蔵一階から二階を見上げた様子

「誰かのためにしたことではない。この建物を使って遊ばせてもらった」

アーティストたちはそう口々に言いました。

人々の想いが、この〈蔵〉を現代に甦らせたのです。

ギャラリー・エフの看板猫、すずのすけ

「ギャラリーエフの蔵」としてのあらたな人生

ギャラリー開催時の〈蔵〉

ギャラリー・エフの蔵では、さまざまなイベントが開催され、そのなかでさまざまなコラボレーションが生まれ、さまざまなジャンルのアーティストたちの交流の場になっていました。

ここでは、そのほんの一部をご紹介します。

写真展『FROM ABOVE』

アメリカ人写真家ポーレ・サヴィアーノさんを中心に進行しているプロジェクト『FROM ABOVE』。歴史的惨事の体験者たちが「あの日」から「現在」を生きる姿を記録する写真プロジェクト。

薩摩琵琶『花一看 琵琶の世界に触れる会』

浅草出身の薩摩琵琶奏者・友吉鶴心さんが、伝統楽器の奏者としての決意とともに浅草から発信するイベント。

落語会『落語会 in 蔵』

怪談を得意とする柳家権之助さんによる独演会。

アコースティックライブ『月夜の森』

毎月12月に開催されていたライブイベント。

日本の伝統音楽や民族音楽、落語、インド音楽、ジャズ、朗読など多種多様な音楽や表現が繰り広げられました。過去にシンガーソングライターの坂本美雨さん、声優の銀河万丈さん、タブラ奏者のU-zhaanさんなどが出演。

ダンス公演『3.10 10 万人のことば』

毎年3月10日、東京大空襲があった日付にダンサーの鈴木一琥さんがアーティスト・カワチキララさんとともに繰り広げられていた犠牲者の「声」を身体で表現する公演。

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